スケジュールに花束を

バンド、フレンチトーストのブログ。広島の明王台という団地にあるきららカフェで、2014年春にすがわらよしのりとマスターとで結成したフレンチトーストのストーリーを伝えます。

2021 北の国を忘れない 〜東日本大震災復興支援コンサート〜

あれからもう10年の時が過ぎ去った。
桜は何度も咲き乱れ、季節は幾つも過ぎ去って行った。


忘れえぬ人の笑顔

そんな人生の宝物をそっと胸の奥深くにしまい生きている人々がいる。
西日本に暮らす僕には決して同じ場所には立つことが出来ない。
そんな思いをずっと抱えてこの10年の歳月を過ごして来た。
大したことは何も出来なかったと思う。
僕がやれた事は本当に些細なことで、あの日の記憶を1ミュージシャンとして記憶に留めておこうと歌を作り歌い続けて来た。
あの日を境に誰かが背負ってしまった人生の悲しみを肩代わりして背負うなんてことは誰にも出来ないことだろうし、肩を気易く叩いて励ますなんてことはとても恐れ多くて出来ないことだろうと考えていた。

蕾になる前に息絶えた夢がある。
愛する人と一緒に見る筈だった風景がある。
津波に呑まれ瓦礫の街に埋もれた名もない日々達。

311とはまるで1種の戦争体験のようだったと振り返ってそんな風に思う。
風化して行く記憶。
あの日の記憶を思い出したくないという人がいる。
あの日の記憶を風化させず留めておきたいと思う人もいる。
何が正しいなんて第三者に言うことは出来ない。
その人の心の中で起こっている出来事は、当事者以外には誰にも予測不可能であり理解する事は困難なことだろうと思う。

あの体験の中で僕達が学ばなければならなかったこととは一体何だったというのだろう。
思わず天に向かい嘆きたくなるような苦しさや悲しさを感じていた人が沢山いたのではないだろうか。
その人達に何の罪はなくとも人生の試練はある日不意に訪れるものなのだろう。
このことに関していえば、それは間違いなく誰にでも例外なく言えることだったように思う。

北の国に起こった311という葛藤のドラマは、日本中いつどこにでも起き得ることだろう。
隣人の悲しみとして目を伏せる訳にはいかない自分自身の問題としてのテーマがそこにはれっきとして存在しているように僕は思って生きて来た。
僕はちっぽけな人間だから決して映画の中のヒーローのようにはなれないけれど、東日本に起きた311という葛藤のドラマを自らの人生の中で明日、いや今日にでも起きることとして捉え感じ考え生きる事から、人生の中で大切にしなければいけないことについて自分自身の思いを誰かに伝えて行くという事ならば出来るだろうと思った。

ガレキの街に埋もれた夢

まだ全然全ての夢を拾い救出することはこの国には出来てはいない。
勿論そんな事は絶対に不可能なことではあると思うのだけれど、少しでもそれに近づけるような現実社会の動きがあって欲しいとは思う。
避難生活を余儀なくされている人々がまだまだ沢山いた。
311という名の国難に遭遇して人生の中で大切なものを失ってしまった人々のその悲しみや痛みをもしも癒せるものがあるとするならば、それは世の中がその悲しみや痛みに対して温かな眼差しと息の長い関心を向けて行くことから始まることなのかもしれないと考えていた。

All Japan

原発を無数に懐深くに抱え込んだ小さな島国日本。
原発再稼働など本当はもうありえない筈だったのに。
原発がなければ、今迄通り大震災後等にやって来たことと同じ復興という筋書きが書けたかもしれない。
この国はまだ昭和の高度経済成長の頃の社会モデルから脱却出来ず、同じことの繰り返しを続けてしまっている。
きっとそのことが、深い絶望を抱え心に傷を負った人々に真の希望を感じることが出来なくさせているのではないだろうかと僕は考えていた。

頑張ろう東北

そういった言葉では既に乗り越えられない社会的なハードルが存在していたことを公の場で議論し合い、この社会が成熟に向かおうと懸命に努力を続ける姿を見る事は殆どなかったような気がする。
きっとそこにこの社会の偽善がある。
僕が歌いたかったのは、頑張ろう東北や絆という言葉に込められていたであろう意味とはたぶん違った別のAll Japanという気持ちだったのかもしれない。
僕に表現者としてそれだけのことを伝える力があるなどとは思ってはいない。
だが自分が心の深い部分で感じている思いを何とか伝えようとせずにはいられなかった僕がいたように思う。
311という名の戦争体験からの復興はまだまだ道半ばである。
あれから10年の歳月が過ぎ去った今も尚。


311から10年目という大きな区切りを迎えたこの3月。
コロナという新たなる試練の日々の中で、僕は1人ギターの弾き語りで311というあの日を思い出しながらミニライブを行った。
タイトルは2021 北の国を忘れない 〜東日本大震災復興支援コンサート〜とした。
自分のiPhoneを使って音声を録音しYouTubeに投稿しようと思った。
決して他人事ではなく自分の身にいつでも起こりうることとして考え、そういった意味に於いて当事者意識を持ち311というテーマに向かい音楽を作り上げ演奏したつもりだった。
311から10年目の今年、このミニライブをこの同じ社会に暮らす皆さんと共に分かち合うことが出来たらと願っていた。


2021 北の国を忘れない 〜東日本大震災復興支援コンサート〜
演奏曲
1 ALL JAPAN
2 PANDORA
3 愛しき人生
4 CHALLENGE
5 フレンチトースト
6 素晴らしき人生を


ALL JAPAN

All Japan 桜待つアーケード街
All Japan ホトトギス鳴き止んだ
311 ニュースは新宿帰宅難民
Ah 列島よ
ガレキの街に埋もれた夢 避難所に咲く花 風揺れ
涙落ちた大地黄昏てゆく 西へ沈む夕日輝き

All Japan 原発なけりゃと嘆く
All Japan 頑張ろう東北とキャッチフレーズ
311 波間で手離したお爺さん
Ah 若人逃がした
ガレキの街に埋もれた夢 拾い集める友になろう
夜空見上げ星は優しく歌う 会えぬ人の笑顔のように

All Japan All Japan 唇に歌を持て
素敵な未来を追い駆けよう All Japan


ガレキの街に埋もれた夢 声にならない虚しい朝
人の情け 肩叩いた温もりに生きる希望生まれて欲しい
愛しい人といつか見つめてた夢 胸にしまう傷を癒して

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